橋本病(甲状腺機能低下症)の症状・原因・治療・バセドウ病との違いを解説

橋本病とは

橋本病とは免疫に異常が生じることで甲状腺に慢性的な炎症を引き起こし、機能が低下してしまう病気です。

免疫の異常というのは、身体を守るはずの免疫細胞が自分の甲状腺組織を 攻撃・ 破壊してしまうことを指します。

橋本病は成人女性の10人に1人が発症しており、罹患率も高いです。

しかし、橋本病はメンタルの不調に似た症状が現れることから、うつ病を疑ってしまうことも少なくありません。

甲状腺の異常は健康診断では気づきにくいので、うつ病かも?と思ったら一度検査してみるとよいでしょう。

橋本病の原因

橋本病は甲状腺が炎症を起こすことで機能が低下する病気ですが、炎症する原因は自己免疫機序によるものとされています

自己免疫機序とは 細菌やウィルスなどから体を守るための免疫が自分の細胞や組織を異物と判断し、攻撃・破壊をしてしまうこと

免疫に異常が起こる理由は未だ明らかになっていません。

しかし、以下のようなことが原因となり、甲状腺機能低下症を発症することで、橋本病が発見されるきっかけとなっているのではないかと考えられています。

  • 過剰なストレス
  • 妊娠・出産
  • ヨウ素(ヨード)の過剰摂取(海藻類・薬剤・造影剤など)

甲状腺とはどんな臓器?

甲状腺とは、喉仏のすぐ下あたりにある10~20g程度の蝶が羽を広げたように見える形の臓器です。

甲状腺は甲状腺ホルモンを生成し、血液から全身の臓器に運ばれることで、さまざまな働きをします。

  • 基礎代謝の亢進・熱産生
  • 交感神経の刺激
  • 心臓・血管の働きを調整
  • 成長と発育

甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても全身にさまざまな症状が生じ、体調に影響を及ぼします。

甲状腺ホルモンのフィードバッグ機構

甲状腺ホルモンは脳から分泌されるホルモンの指令により、分泌量をコントロールしています。

以下の図表で詳しくみていきましょう。

甲状腺ホルモンのフィードバック機構について、医師が詳しく解説していきます。

甲状腺ホルモンが一定の濃度まで分泌されると脳下垂体や脳視床下部に指令が届き、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑制します。

このような仕組みにより、血中の甲状腺ホルモンが多すぎず、少なすぎない適切な量にコントロールされています。(ネガティブフィードバック)

橋本病の症状

橋本病は甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌量が減少すると、全身にさまざまな症状が認められます。

  • 全身症状:疲れやすい・寒がりや冷感・発汗低下・皮膚乾燥・蒼白・体重増加
  • 精神症状:元気がなくなる・思考力や記憶力の低下・無気力・傾眠傾向(肩を叩くなどの軽い刺激がないとぼーっとしてしまう)
  • 循環器症状:徐脈・低血圧
  • 消化器症状:食欲低下・腸の蠕動(ぜんどう)運動低下による便秘
  • 筋症状:筋力低下
  • 神経症状:腱反射の減弱・腱反射遅延
  • 月経:月経過多・無月経
  • 浮腫:粘液水腫
  • その他:声のかすれ・脱毛

上記のうち、橋本病の症状で特徴的なものとされているのが粘液水腫と腱反射遅延です。

それぞれを次項で簡潔に解説していきましょう。

粘液水腫

粘液水腫とは、皮膚を強く押しても痕が残らない浮腫(むくみ)のことです。

橋本病(甲状腺機能低下症)では、とくに以下の部位で認められることが多いです。

  • まぶた
  • 下肢

甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると全身の代謝に影響するため、ムコ多糖類を貯留し、水分が全身に溜まりやすくなります。

やがて、心臓の膜にも水分が貯留し始め、心タンポナーデを引き起こすことがあるので注意が必要です。

腱反射遅延

腱反射とは、アキレス腱などの筋をハンマーなどで叩き、刺激を与えた際に起こる筋肉の反射のことです。

橋本病(甲状腺機能低下症)では、筋肉における電解質の代謝も低下するため、筋肉の収縮や弛緩の反応が鈍くなり、腱反射の遅延が認められます。

橋本病とバセドウ病の違い

橋本病とバセドウ病はどちらも自己免疫反応により、甲状腺を攻撃することで発症する病気です。

しかし、橋本病は甲状腺の機能が低下し、バセドウ病では甲状腺の機能が亢進するため、ほぼ正反対といえる症状が出現します。

橋本病とバセドウ病の違いについて、医師が一覧にして解説します。

橋本病はうつ病に似た症状、バセドウ病は更年期に似た症状が現れると考えると覚えやすいかもしれません。

橋本病の治療

橋本病は根治治療できる方法が確立されていないため、行う治療は対症療法のみです。

甲状腺の機能が正常に保たれている状態であれば、血液検査で甲状腺ホルモンの数値を定期的に計測し、経過観察を行います。

甲状腺ホルモンの分泌量が少なく、甲状腺機能低下症の症状が認められる場合は、甲状腺ホルモン(甲状腺ホルモンT4製剤)をお薬で補います

  • チラージンS(一般名:レボチロキシンナトリウム)

甲状腺ホルモンを補うことで、甲状腺機能低下症の症状は改善します。

しかし、服薬するのを自己判断で中止したり、飲み忘れなどがあると心タンポナーデを引き起こす原因となるので、副作用が気になる場合は必ず医師に相談しましょう。

また、高齢の方においては心臓に負担がかかることもあるため、服用前に心機能の状態を評価することが重要です。

橋本病(甲状腺機能低下症)と診断された場合の注意点

橋本病(甲状腺機能低下症)と診断された方や、その予備軍(潜在性甲状腺機能低下症)と診断された方に向けて症状を悪化させないための注意点を紹介します。

海藻類などに多く含まれるヨウ素(ヨード)は過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンが低下することがあるため、なるべく避けるようにしましょう。

ヨウ素が多い食品は以下の通りです。

  • 昆布
  • とろろ昆布
  • 昆布のだし汁
  • ひじき

上記の食材よりは含有量が少ないですが、以下の食材もなるべく控えておくとよいでしょう。

  • わかめ
  • 海苔
  • 寒天
  • いわし

この他に、造影剤や市販のうがい薬にも含まれています

造影剤を用いた検査をするときや、ヨードという記載があるうがい薬には注意が必要です。

また、橋本病と診断されても、甲状腺の機能に異常がない場合や、潜在性甲状腺機能低下症である場合はすぐに治療を開始するわけではありません。

甲状腺の機能を悪化させないために、予防の一環としてヨウ素(ヨード)を控えることが大切です。

お困りの方は当院の内分泌外来へ

武蔵小杉こころみクリニックは、武蔵小杉徒歩2分の生活習慣病に特化したクリニックになります。

関東労災病院や日本医科大学武蔵小杉病院と強固に連携しており、専門医による内科診療を行っています。

隣駅の元住吉でも、毎日内科外来を行っています。

武蔵小杉周辺で橋本病でお困りの方は、ぜひ武蔵小杉こころみクリニックにご相談ください。

当院内科外来のご案内